花束でもなく、紙袋に入っているのでもなく、電車の中で手に野花。

周りにいるほとんどの人がうつむいて小さな画面を見続けている車内で、緑のいのちと、そこにある物語を感じとるように握られた指先に引き込まれてしまった。

しばらくして次の駅に到着すると、その人はすっと立ち上がり、どこまでも前を向いたまま、ホームの人混みに消えていった。

知らない誰かが送っている人生の時間。その束の間。