2021年11月
ある時、からだの中にきれいな湖を生んだ。
ほとりに豊かな葉っぱを持つ大きな木を植えると、やがてその梢で小鳥が休み、足元には木漏れ日があふれて、いつの間にかとりどりの花がそよ風に揺れて咲いていた。
そこでは、今まで出会った好きな人たちが思い思いに寛いでいる。
いつも会う友達も、何年も会えていない大好きな同僚も、もう会えないかもしれない人もいる。
もうひとりぼっちだと思ってどうしようもない気持ちになった時、その人たちの優しい顔を思うと少し安心した。
声を思い出してみたら笑い声で、ちょっと泣いたりもした。
今年の初夏のある日。金色の光を呼吸と一緒にからだの中に取り込んだその日から、誰にも話さない、わたしだけが両手に受け取る微笑みや、やわらかに溶けていくような許しがいくつも訪れた。
それらが一滴ずつ満ちていく時、「わたし」はわたしだけでできているのではなくて、たくさんの「あなた」が含まれていることを知った。
そうか。
からだの中に生んだその場所は、ただの想像上の場所ではなくて、もうすでに「わたし」をつくる一部だったんだね。
あなたがこうしてわたしの中にいてくれるように、わたしも、「ここにいるからね」って笑いかけているよ。