2020年4月
今年の桜はひとりで見た。

4月になってからできるだけ電車に乗るのを控えて、近所の公園で自転車を借りて走ったり、以前なら考えつかなかったほど遠くまで歩いたりしていた。

今日はここまで行ってみよう。出発前に地図を見て決めた場所を目指して、たぶん、敢えて何も考えないようにして、ただただ真っ直ぐに進んだ。

そんな道の途中で思いがけず満開の桜が現れる。そのたび近くに寄って見上げていると、会いたい人たちのことや、はっきりと形にすると持ちきれなくなるような気持ちが、それでもゆっくりと浮かんでくるようだった。