2020年8月





その子が来たらすぐわかるように、広い改札を見渡せる少し離れた場所に立つことにした。

人混みによくよく目を凝らしてわたしが先に見つけよう。そうだ、はじめて目が合う時、わたしの表情が見えるように帽子は脱いでおこう。

大きな掛け時計を見ながら落ち着かずにいるうち、いよいよ二人を乗せた電車の到着時刻になった。少しの間があいて、改札からどっと人が押し出されてくる。

「人見知りだから」と聞いていたその子は、行き交うたくさんの大人たちの間から姿を現して、叔母さんのとなりで小さなからだをとことこ揺らしながら一目散に駆け寄ってきてくれた。

言葉を交わすまでの、その短い時間をしっかりと見届けて。

今日のはじまり。